過去の記憶(プチ・トラウマ)が現在の症状につながる
トラウマ(心的外傷)というと、命が脅かされるような出来事(戦争、事故、虐待など)によって、強い精神的衝撃を受けることが原因とされます。当院で慢性症状の本質的な原因を探求していると、一般的に知られているようなトラウマ(心的外傷)と言わないまでも、「プチ・トラウマ」とも言える慢性症状に関係する過去の「誤作動記憶」の影響が多く存在していることが分かります。「プチ・トラウマ」の特徴として、理性的に処理して意識的にはほとんど気にしていなくても、無意識的に心の奥に保存されている記憶と言えるケースがほとんどです。
過去に起こった記憶が無意識に思い出されて、それが現実に起こっているかのような感覚があるときに、「フラッシュバック」という心理用語で表現されます。フラッシュバックは「恐怖」や「怒り」などの感情や身体的症状など、感覚の記憶として再現されます。そして、その記憶はまともに意識に上らないため、フラッシュバック性の記憶は鮮明に再現されますが、言語化するのが困難な場合が多いようです。
この「フラッシュバック」は、強いトラウマ体験(心的外傷)を受けた場合の心的外傷後ストレス障害(PTSD)の特徴的な症状の一つとして知られていますが、冒頭で述べたように長年の心身条件反射療法の臨床研究では、強いトラウマ体験でなくても、過去の記憶がフラッシュバックされて、身体的症状を引き起こすケースに多く遭遇します。検査で示された過去の記憶を引き出して調整を行うと、施術直後にその患者さんが訴えていた症状が消失することから、過去の記憶が関係していたことが分かります。
施術後に、「そういえば、そのこと(過去の記憶)をふと思い出しました」とおっしゃる患者さんも少なくはありません。症例によっては、10年〜20年以上も前の記憶でも、検査を進めるとほとんどのケースで、症状に関係する誤作動記憶にたどり着き、調整を行うと症状の改善につながります。時系列の検査をLPRT(言語生体反応検査法)で進めると、ピンポイントでその誤作動記憶にたどり着き、患者さんはもちろん、術者もその検査の正確性に驚かされます。その検査の結果も慣れてくると当たり前になりますが、それでも、抱えている患者さんの問題はそれぞれ異なるので、その症状が改善されるときの喜びはいつも新鮮です。
もしも、「プチ・トラウマ」が慢性症状の原因になっている場合、タイムカプセルのように保存されていた内容を引き出して、その過去の記憶に戻って調整を行います。その内容が明確に表現できる場合もありますが、場面だけで言葉に表現できない場合もあります。内容が明確に言語化されなければ調整ができないわけではないので、誤作動反応を示している場面だけで調整を行います。慢性症状に関係する誤作動記憶は複数存在することが多いのですが、調整後には多くの症例で症状の改善を確認することできます。隠れた「プチ・トラウマ」を見つけて慢性症状を解消していきましょう。
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